「薬剤師は未来がないって本当?薬剤師の今後の将来性やこれから求められる力を知っておきたい!」
薬剤師は未来がないという意見もあり、薬剤師として働く人や目指す人は不安を抱くのではないでしょうか。
薬剤師の今後の将来性や、これから求められる力は何があるのか知っておきたいですよね。
- 薬剤師は未来がないって本当なの?AIに仕事を取られる?
- 薬剤師の今後の将来性ってどうなんだろう?
- これから薬剤師が求められる力な何だろう?
など、いろいろなことが気になるのではないでしょうか。
この記事では薬剤師の将来性を考え、これからの薬剤師に求められる役割とはどのようなものなのかを解説しています。
薬剤師の将来に不安を感じている皆さんも、これから薬剤師を目指す皆さんも、薬剤師が必要とされていくためには何が必要か一緒に考えてください!
- 薬剤師の将来性がないと言われたのは、有効求人倍率低下やAI、リフィル処方箋導入が理由
- 地方や病院では需要が高く、AIやリフィル処方箋はむしろ薬剤師の必要性を高める
- 薬剤師の将来性は十分期待でき、薬剤師業界全体は今後も安定が見込まれる
- 調剤薬局・製薬会社への就職は難易度が上がるが、ドラッグストア・病院への就職は需要増
- 選ばれる薬剤師になるには、専門性を高め、在宅医療に積極的に関わることが大切
- 語学力やコミュニケーション能力、マネジメントスキルを磨くことも重要
薬剤師は未来がない?将来なくなる・ならない方がいいと言われる理由
本当に薬剤師には未来がないのでしょうか。
ここでは、薬剤師はなぜ必要ないと思われてしまい、なぜ将来性がないと考えられてしまうのか理由について解説していきます!
- 有効求人倍率が下がっている
- 仕事の一部がAIによって代替される可能性が高い
- リフィル処方箋が活用される影響
有効求人倍率が下がっている
まず、薬剤師の有効求人倍率が下がっているという現状があります。
薬剤師免許を持つ人は30万人を超えており求職中の薬剤師が増えているのです。
一方、求人数は3年間で3000件減り、薬剤師の需要は年々低下しています。
薬剤師の有効求人倍率は低下傾向にあり、H28年の6.25倍からH30年の4.59倍に低下しているのです。
H28年には薬剤師1人当たり約6件の求人から選べたものが、H30年には約4件へと減ってしまっています。
つまり供給過多になっているといえるかもしれません。
ただし、全職種平均の有効求人倍率はH30年で1.61倍であることは留意すべきでしょう。
他の職種と比べると薬剤師の需要は相変わらず圧倒的で、むしろ人手不足となっているのです。
薬剤師の有効求人倍率は平均と比べると、3倍近くもあり、薬剤師が職場を見つけやすい状況であることは変わりありません。
特に地方では、薬剤師不足は顕著となっています。
都市部や、薬科大学のあるところでは薬剤師は比較的多いですが、地方の薬局や病院では深刻な薬剤師不足になっているのです。
そのため高収入や好待遇の求人は地方にも集まる傾向があります。
仕事の一部がAIによって代替される可能性が高い
「AIロボットが業務の一部を代行」といったようなニュースを聞くと、薬剤師業務もAIに代替されてしまう日が来るのではないかと不安になるのではないでしょうか。
現在日本で開発が進んでいる薬学分野のAIは、あくまでも薬剤師の業務を補助するものとして位置づけられています。
例えば、慶応大学などの共同研究で開発されている薬学AIは、服薬指導などの内容を薬剤師に補助的に使えるようになっているものです。
オックスフォード大学の研究によれば、薬剤師の仕事が今後10年~20年の間になくなってしまう確率は1.2%にすぎない、といわれています。
今ある仕事のうち、全体のおよそ半数にあたる47%がAIにより代行されうる、とされています。
しかし薬剤師の仕事はAIに代行されるとは考えられません。
医師の処方の意図を高度な知識と専門性で読み取り、患者とのコミュニケーションを元に的確な指導をするという、薬剤師の仕事はAIには代行しえない仕事なのです。
こう考えると、薬剤師の将来は希望を十分持てるといえるのではないでしょうか。
もちろん一部の調剤業務などの単純作業はAIなどで代替されることがあっても、薬剤師の必要性は残り続けます。
AIは、あくまでも薬剤師が十分に力を発揮するためのサポートという位置づけです。
しかし、機械に代替され得るような単純な作業しかできない薬剤師は、淘汰されてしまうということでもあります。
リフィル処方箋が活用される影響
2022年より処方箋の再利用ができるリフィル処方箋が発行できるようになりました。
定期処方を服用することで症状が安定する場合、一定の条件を満たせば1枚の処方箋を最大3回まで使用できる制度です。
このリフィル処方箋の導入によって、薬剤師の必要性が下がるのではないかといわれていますが、むしろその逆です。
リフィル処方箋は、同じ処方箋で3回まで利用できます。
つまり、今までは薬をもらうために、毎回病院で医師から処方箋を発行してもらう必要がありました。
しかし、リフィル処方箋は異なります。
1回目は病院を受診し処方箋を発行してもらわなければなりませんが、2回目と3回目はそのままその処方箋を持って薬局に行けばよいので医師の診察を受ける必要はありません。
薬局は3回とも処方箋を受け付けたことになるので、技術料などの利益はしっかりと得ることができます。
リフィル処方箋の2回目、3回目を受け付ける場合、患者は医師の診察を受けていません。
そのため薬剤師が服薬指導時に患者とのコミュニケーションでしっかりと状態を見極める必要があるのです。
リフィル処方箋は、むしろ薬剤師の職能を発揮する絶好の機会といえるでしょう。
薬剤師の今後の将来性は?業種による需要の違いを解説
ここまで薬剤師の将来性を危惧する理由について述べてきました。
ここからは薬剤師の将来性や展望について詳しく解説していきます。
- 薬剤師の将来性は十分期待できる
- 薬剤師業界全体は今後も安定が見込まれる
- 調剤薬局・製薬会社への就職は難易度が上がる傾向
- ドラッグストア・病院への就職は需要増
薬剤師の将来性は十分期待できる
有効求人倍率は下がっているものの、全職種平均でいえば、まだまだ売り手市場です。
薬の専門家としての知識や処方意図を読み取り、患者への指導を行うことは、AIに取って代わられるような仕事ではありません。
また、リフィル処方箋は薬剤師の職能を発揮するチャンスでもあります。
このように、薬剤師の将来は決して悲観するようなものではありません。
では、実際に将来性の指標となる薬剤師の需要に関しては今後どうなっていくのでしょうか。
詳しくこのあと解説するので、薬剤師として今後の進路に迷いがある方は、ぜひ参考にしてください!
薬剤師業界全体は今後も安定が見込まれる
確かに薬剤師の有効求人倍率は減少し、年々薬剤師の数は増加し飽和状態になっていく、という指摘もあります。
一方でAIに完全に代替できる職業でないことも明らかとなっているのです。
また、日本では急速に高齢化社会が進んできており、使用する薬剤はこれからも増加する一方だと言えるでしょう。
このことから考えても、薬剤師を含め医療業界は今後も安定的に推移すると考えられています。
調剤薬局・製薬会社への就職は難易度が上がる傾向
しかしながら、薬剤師業界全体は安定的に推移するとはいえ、調剤薬局や製薬会社への就職は難易度があがっていくでしょう。
国の医薬分業推進により、これまで調剤薬局は右肩上がりで成長を続けてきました。
しかし、高齢化に歯止めがかからず、医療費を削減するようになったり、ピッキングなどの一部の調剤業務を非薬剤師でもできるようになると、薬剤師の需要も以前ほどではなくなりました。
コンビニより多いといわれる調剤薬局も年々減少してきており、調剤薬局の薬剤師求人数自体が減ってきています。
また、製薬企業に関しては以前よりも厳しい状況が続いています。
製薬会社関連の勤務者の数が2016年から2020年の4年間でおよそ3,000人減っているのです。
とりわけMRの減少が顕著となっています。
2016年度には、63,185人いたMRが、2020年度には53,586人となってしまい、およそ1万人少なくなってしまったのです。
この理由としては、国の後発医薬品使用促進政策による後発品のシェア拡大によって、新薬が出づらくなったことがあげられるのではないでしょうか。
特許が切れればすぐに後発品に切り替わってしまいます。
後発品はすでに効果がある程度わかっていることもあり、MRによるプロモーションも先発品ほど派手にやる必要がないのです。
また、定期的に実行される薬価改定による利益率低下の影響が大きく、今後さらに市場は厳しくなってくると考えられます。
ドラッグストア・病院への就職は需要増
これに対し、近年ドラッグストア業界は出店数も増え、成長傾向にあります。
そのため、ドラッグストアに勤務する薬剤師の需要も高まっています。
調剤併設のドラッグストアだけでなく、スイッチOTC薬の種類が増え、第一類医薬品の販売などセルフメディケーションの需要も高まってきているためです。
大手のドラッグストアチェーンは、この追い風を利用し、軒並み店舗数を増やす拡大戦略をとっています。
このため、これからもドラッグストア勤務薬剤師の需要は今後も増加していくことが予想されているのです。
病院で働く薬剤師の将来も比較的明るいといえるでしょう。
最先端の医療に触れることができるということで、意識の高い薬学生や薬剤師にとって病院への就職は人気です。
専門薬剤師の資格取得の条件が整っている環境であることも魅力となっており、感染症専門薬剤師や、がん専門薬剤師などの認定薬剤師も取ることができます。
高齢化社会が進む中で専門的なスキルを持った、病院薬剤師の価値は高くなっています。
2012年に薬剤師の病棟業務が評価され、「病棟薬剤業務実施加算」が新設されました。
また、2016年の診療報酬改定では在宅患者訪問薬剤管理指導料の点数が引き上げられました。
これを受けて、今後は在宅医療分野に参入する病院も増えています。
以前は病院薬剤師は、技術料を増やせる存在ではありませんでした。
しかし近年はその専門性を評価され、技術料に反映させられるようになってきているのです。
今後も病院薬剤師の仕事が評価されて行くことが考えられており、従来は低く抑えられていた給与面も改善されていくのではないでしょうか。
これからの薬剤師に求められる力は?時代が求める薬剤師になるために
ここまでは薬剤師の将来性について、医療をとりまく環境面から紹介してきました。
ここからは、薬剤師に今後求められることについて説明します。
選ばれる薬剤師になるためにはどうすればよいのかを知りたい人は、ぜひ参考にしてください!
- より高度な知識を身につけ専門性を高める
- 在宅医療に積極的に関わる
- グローバル化に対応するため語学力を磨く
- 患者様に寄り添うコミュニケーション能力を身につける
- 管理薬剤師としてのマネジメントスキルを磨く
より高度な知識を身につけ専門性を高める
これからは高度な薬学的貢献のため専門性の高い薬剤師が必要とされる時代です。
認定薬剤師や専門薬剤師などの資格の有無が、薬剤師の評価に大きく関係してきます。
既に、日本薬剤師研修センターの定める研修を受けて認定を受けた認定薬剤師は、かかりつけ薬剤師の必須条件となっています。
また、小児薬物療法認定薬剤師、がん薬物療法専門薬剤師などより高度な研修が必要となる資格もあります。
より専門性をもって治療に深く携わることのできる薬剤師が求められているのです。
在宅医療に積極的に関わる
今後も高齢化はさらに進んでいきます。
薬歴の管理がより重要な高齢者が増えており、健康サポート薬局やかかりつけ薬剤師の需要も高まるしょう。
患者さんの健康相談を定期的に行う中で、患者さんのわずかな変化に気づいてアプローチを変えたり、服薬や健康に関する悩みを解決したりする能力が求められてくるでしょう。
また通院が難しく、在宅医療を希望する患者さんも増加しています。
定期的に薬を処方する薬剤師は、在宅の患者さんに接する機会が多いです。
そのため、患者さんに健康に関する悩みを相談されるなど、医師よりも近くで患者さんをサポートできる薬の専門家としての活躍が見込めるのではないでしょうか。
在宅医療の算定点数が上がっていることも、薬局や病院が在宅医療へ参入する後押しとなっている理由の一つです。
特に在宅医療や緩和ケアのスキルは、薬剤師として働く上で大きなメリットとなることを肝に銘じておく必要があります。
在宅医療にかかわるということは、一般的な薬だけではありません。
注射坐位や点滴の無菌調整の技術、緩和ケア、介護に関する知識も必要になるということなのです。
グローバル化に対応するため語学力を磨く
外国人観光客や日本で暮らす外国人の増加により、語学ができる薬剤師の価値は高まっています。
コロナ禍で、一時期需要は落ち込みましたが、コロナ終息後は再び外国人観光客は増加するでしょう。
ドラッグストアでは日本製の医薬品を求めて外国人が多く訪れるはずです。
日本の各地で語学に堪能な薬剤師は不足しています。
英語や中国語など、外国語ができる薬剤師はこれからも重宝されるのではないでしょうか。
外国の方にも安心して利用してもらうためにも、外国語の習得にチャレンジしてみてもよいかもしれません。
患者様に寄り添うコミュニケーション能力を身につける
AIが調剤業務を行うようになった場合、薬剤師の職能は対人業務に発揮されるようになるでしょう。
患者の不安や悩みに寄り添った服薬指導や健康相談、在宅医療における服薬指導業務は、AIでは対応できるものではありません。
コミュニケーションを軸とした薬剤師の働きは今後も重要視されるはずです。
会話力はもちろん、患者様のちょっとした変化も見逃さない観察力も必要になるでしょう。
むしろ、調剤などの業務をAIなどが引き受けてくれることで「薬剤師本来の職能が活かせる」と考えるべきです。
また、患者さんだけでなく、在宅医療や介護の現場では他の医療従事者や介護スタッフとの連携も大切です。
近年では病院薬剤師と調剤薬局の薬剤師が連携する薬薬連携も重要視されてきています。
相手を尊重したコミュニケーションで、信頼される薬剤師になることができれば、密なチーム医療が可能となるのではないでしょうか。
管理薬剤師としてのマネジメントスキルを磨く
薬局店で働く場合はマネジメントスキルを磨くのも大切です。
管理薬剤師なら、薬局店舗の責任者として活躍することができるでしょう。
管理薬剤師は、薬局や医薬品を置いている店に一人配置することが薬機法によって義務付けられています。
医薬品の管理のほか、従業員を監督も行うため、一般の薬剤師とは仕事内容も異なるのです。
特に資格試験などはありませんが、責任者ですので当然豊富な経験や知識、コミュニケーション能力が求められます。
管理薬剤師として活躍するのも、選ばれる薬剤師になる方法といえるでしょう。
まとめ
この記事では、薬剤師の将来性について説明してきました。
薬剤師の有効求人倍率は低下してきていますが、まだまだ売り手市場です。
高度な専門性を活かして患者とのコミュニケーションを元に行う服薬指導はAIには代替できません。
また、認定薬剤師などの資格を取ることで、薬剤師の職能はより深化していきます。
ドラッグストアや病院薬剤師など、薬剤師の需要が高まっている職種もあります。
専門性を高め、日々研鑽し、地域医療に貢献することでより薬剤師の将来性は高まっていきます。
選ばれる薬剤師になるために、専門的知識とともに語学力やコミュニケーション能力、マネジメントスキルを高めていくとよいでしょう!